映画を通じて問いなおす「記憶」の形成
院生代表者
- 梁 説
教員責任者
- 渡辺 公三
企画目的・実施計画
本企画の目的は、人々の〈記憶〉を映画(映像)として表出する作品を鑑賞することで、記憶の描かれ方、記憶の継承のされ方、記憶の変転の有り様を、文学、社会学、人類学といった領域横断的な知見から考察することを目的としている。
映像作品の制作者は、人々の生活の中の政治・文化・宗教・差別といった数多くの要素が混然としている現実の諸相を映し出し、人文科学がテーマとする〈記憶〉や〈語り〉といった概念の基底となる構造を表出しており、見る側の〈記憶〉についての思考を喚起させる。〈記憶〉という共時・通時を内在する概念について、映画という現代の事象表現から読み解こうとする本プロジェクトの試みは、「表象」理論と実践に挑むものであり、本プロジェクトの意義としてある。また、公開研究会を前提としている点においては、個人では観賞困難な映画作品を広く一般に鑑賞する機会を提供するという点においても意義を備えている。
活動内容
- 1.特別試写会
制作者倉岡明子氏を迎えて-『だからまいにちたたかう』(7/29)実施、プレ企画『六ヶ所人間記』(7/28)『夏休みの宿題は終わらない』(7/29)実施。映画上映に加え、制作者倉岡氏より、10年にわたるパレスチナの状況の変化などの説明を受けた討論会の実施。先端研修了生金城美幸氏(立命館大学衣笠総合研究機構PD)から、直近のパレスチナの状況を聞くなど、内容の濃い討論会を実施。事前学習として、パレスチナ-イスラエル問題に関する学習、試写会のための事前試写を行った。
- 2.『こつなぎ――山を巡る百年物語』上映会
■日時: 2014年11月16日(日) 12:30~16:00
■会場: 立命館大学衣笠キャンパス 充光館301
■プログラム:
12:00 開場
12:30~14:30 映画上映
14:45~16:00 森下直紀氏(和光大学経済経営学部)講演・全体討論
16:00 終了
16:15~18:00 懇親会
■開催趣旨:
法的な紛争とその歴史は、いかに記憶され、記録されたのか。
このような問いをたてる視点から、本企画ではドキュメンタリー映画『こつなぎ――山を巡る百年物語』をとりあげて上映します。
本作におさめられているのは、入会権をめぐる議論に焦点化される近代日本における土地所有や山林の用益にかかわる制度の問題と、山村という、ある生きる場をめぐる人々の闘いの記録だといえるでしょう。また、上映とあわせて、環境史や環境技術社会論がご専門の森下直紀氏を講師として招聘した公開討論会を行ないます。
本企画では、多様な学的観点をふまえたフロア全体でのディスカッションを通じて、映像作品での人々の記憶の描かれ方、記憶 の継承のされ方、記憶の変転のあり様を多様な学問分野の領域横断的な知見から考察することを試みます。
■参加費無料・事前申込み不要
■主催:立命館大学先端総合学術研究科2014年度院生プロジェクト「映画を通じて問いなおす「記憶」の形成」
■映画『こつなぎ――山を巡る百年物語』概要
企画・制作: 菊地文代
監督: 中村一夫
製作会社: 株式会社周
配給: 「こつなぎ」上映実行委員会事務局、株式会社パンドラ
日本/2009年/日本語/カラー、モノクロ/ビデオ/120分/
山形国際ドキュメンタリー映画祭2009特別招待作品
「東北地方の山間の集落で、1917年から1975年まで、入会権をめぐる訴訟裁判があった。人々が自由に山に入り、木 々や実など山の恵みを享受してきた慣習に対して、近代的な土地所有制度が強制され、結局反地主側の敗北に終わる。40年前に取材に入った菊地周さんら3人が残した映像とインタビュー録音をもとに、闘いの歴史を明らかにしていきながら、現在の人々の暮らしに目を向け、日本の農村における近代化の問題を、今日に問い直す。」(出典:YIDFF 2009 公式カタログ〔http://www.yidff.jp/2009/cat035/09c038.html)
▼映画『こつなぎ』ダイジェスト版はこちら
- 3.映画『基地の町に生きる』上映会とトークセッションの実施(2015/2/21)
米軍基地の街で生きる女性たちの証言を集めたドキュメンタリー映画の上映に加えて、秋林こずえ氏(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)には、軍隊と性暴力をめぐってジェンダーの視点から、また先端研修了生の大野光明氏(大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任助教)には、米軍基地の歴史と現在をめぐる社会運動の視点からコメントをいただき、米軍基地をめぐる〈記憶〉がどのように分断され、自分の基地の〈記憶〉をどう継承しうるのかについて討論を行った。