「震災をめぐる障害者・病者の生活問題」に関するプロジェクト
院生代表者
- 有松 玲
教員責任者
- 立岩 真也
企画目的・実施計画
本研究会は、2011年度から「障害者」「病者」の視点から見た震災の支援体制の問題点を中心に調べ、また、被災した福島県の在宅難病者を京都に招き、震災後、長く続いた停電に対してどのような対策が必要なのかを語ってもらうシンポジウムを開いた。2012年度はさらに各々のメンバー関心を置くテーマを現地に赴き調査し、その成果を公表している。2013年度はそれらの調査・報告をもとにさらに研究をメンバー全体で共有し、個々のメンバーの関心を深化させ、そしてこれまでの調査・研究をまとめることを目的とする。
また、震災により発生した津波による障害者の死亡率が健常者の2倍であったことを受け、その時、個々の障害者に何が起こったのか十分に調査せず、対策も十全に行わないままである。そのような中、風化という言葉が聞こえるようになってきた今、その風化を防ごうと各地で取り組みが行われている。災害弱者を研究の対象とする研究会として、そして個々のメンバーが一研究者として、何ができるのか、見つめ続け問い直すこともこの研究会の目的である。
活動内容
研究会の活動として10月23日に、東北関東大震災障害者救援本部が制作した「逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者」DVDの上映会を行った。上映会を終えた後セミナーを開き、参加していただいた方々と理解を深めることを行った。質疑応答でも介助者の確保に対する不安や多くの傷病者が発生した際に優先度を選別するトリアージが合法とされた場合の優先順位の在り方など、活発な議論が行われた。
また、研究会のメンバーである佐藤浩子氏が郡山に調査に行った。詳細は、佐藤氏が個別に報告書を出しているが、この調査自体が風化を防ぐことに役立つと考えている。
成果及び今後の課題
しかし、反省点もある。研究会の開催等を呼びかける実務担当者である筆者の体調が安定せず、なかなか研究会の開催を呼び掛けられなかった。個人的なことではあるが、その結果として研究会が開催できなかったことは残念でならない。
東日本大震災の記憶の風化という言葉が、報道等で言われている昨今、この研究会を細々とでも続けていくことは、まだ集められていない震災で犠牲になった障害者・病者の詳細な記録をありのまま残し、解析し、どうして犠牲が多くなってしまったのか、解析するという作業と同時に風化にいかに立ち向かうのか、ということについても非常に意味がある。そうしたことに関心がある人はもちろんのこと、関心が薄い人たちも集まり、考え続けることが、風化を防ぐために重要ではないだろうか。
構成メンバー
- 有松 玲
- イム・ドンヨク
- 桐原 尚之
- クァク・ジョンナン
- 権藤 眞由美
- 酒井 美和
- 佐藤 浩子