ヨーロッパ文化・芸術・思想研究会

院生代表者

  • 川﨑 寧生

教員責任者

  • 竹中 悠美

企画目的・実施計画

 本研究会は、2009年度から行ってきた「『ドイツ文化』研究会」、「ヨーロッパ文化研究会」を継承し発展させるものである。これまでの研究会では、おもに芸術を対象として、西欧思想の根本にあるものを見極め、日本的なものとの相違を理解しようと努めてきた。昨年度は、ハイデガー『芸術作品の根源』を用い、ハイデガーの術語に秘められた意図を理解し、西欧の伝統における芸術の意味を理解することを目指した。今年度は昨年度の目的をひきつぐとともに各自の研究を深めるため、哲学的解釈学を展開させたハンス=ゲオルク・ガダマーの『真理と方法』、そのなかでも、芸術論と言語論に注目した。芸術や言語の領域を横断する現代の解釈学について考察するとともに、研究会員個々が各自の研究(学会発表・論文執筆)において解釈学の視点をどう活かすことができるか検討することを目的とした。
 各研究会では、Hans-Georg Gadamer; Wahrheit und Methode: Grundzüge einer philosophischen Hermeneutik, J.C.B. Mohr, 1960.(『真理と方法Ⅰ』轡田収他訳、法政大学出版局、1986)を輪読した。必要に応じて、原著や英語文献にも目を通すとともに、丸山高司『ガダマー』(講談社、1997)、渡邊二郎『構造と解釈』(ちくま学芸文庫、1994)などの文献も参照した。輪読を進めつつ各分野に当てはめ具体的に考えることで、参加者の理解度を高めるとともに積極的に発言することに努めた。

活動内容

  • 第1回研究会
    日時:2013年8月11日(日)14時00分~18時00分
    場所:末川記念会館 2階 第2会議室
    内容: 初回のため研究会メンバーは事前学習としての「序論」までを各自読み、研究会へと臨んだ。研究会では講師より昨年度扱ったハイデガーとガダマーの連関などについて説明していただきながら、一文一文精読していった。各自が抱いた疑問について講師の示唆のもと参加者が意見を出しあい、議論を深めた。
  • 第2回研究会
    日時:2014年1月12日(日)14時00分~18時00分
    場所:朱雀キャンパス 210号教室
    内容: 第2回目から本研究会のメンバーに加え、他大学の学生も参加した。参加者の提案により、「第Ⅰ章 美学的次元の乗り越え 第1節 精神科学にとっての人文主義的伝統の意味」を中心に読み進めた。特に「教養」と「共通感覚」のところでは、音楽オーケストラや絵画鑑賞における「教養」と「共通感覚」とは何かについて、それぞれの意見を出し合い、活発な議論をすることができた。 
  • 第3回研究会
    日時:2014年1月12日(日)14時00分~18時00分
    場所:朱雀キャンパス 210号教室
    内容: 前回に続き、「共通感覚」を読み進めた。複雑で内容を捉えることが難しい箇所では、講師による思想史的な知識について説明していただくことでより深く理解するとともに、内容を捉えたうえで、それを具体的な芸術の様相に当てはめるとどのようなことが言えるのかについて、美術や音楽の現象から議論した。文章を深く読解しつつ自発的に発言することによって、単に内容を論理的に把握するだけでなく、各自の研究に引き付けながら「共通感覚」および「判断力」概念を理解することができた。
  • 第4回研究会
    日時:2014年3月12日(水)14時00分~18時00分
    場所:朱雀キャンパス 312号教室
    内容: 前回までの総まとめも行ったうち、「判断力」および「趣味」を中心に輪読した。まず、「規定的な判断力」と「反省的な判断力」の違いを現代の出来事に当てはめながら理解・共有した。次に、カント以前に示されてきた「共通感覚」とカントが示した「共通感覚」の違いをガダマーはどのように捉え、カントを批判しているのかに注目し議論を進めた。また、「共通感覚」を養うためには現代において何が必要かを参加者が自発的に意見を述べ合うことができた。

成果及び今後の課題

 本研究会ではこれまでと同様に内容把握とともに、一つひとつの語句を洗い出し、曖昧な箇所を残さないように基本文献を読むことを重視した。より具体的に理解することをめざし、音楽・美術館・現代美術などの参加者の研究対象を取り上げたことで、参加者が活発に発言でき、各研究分野についての理解も深めることができた。
 当初は芸術論および言語論を進めていくことを予定していたが、結果としては芸術論にとどまり言語論にまで進められなかったことが反省点としてあげられる。参加者が自発的に発言することで、昨年度よりも活発な議論を行えたことは、本研究会の成果であると同時にこれまで続けて行ってきた研究会の成果であると考える。
 今後もこのような研究会を行い、近代哲学・文化形成について論じる場を作ることを考えている。また、ただ議論するのではなく、研究会での内容を踏まえた発表あるいは論文作成へ発展させていきたい。

構成メンバー

  • 川﨑 寧生(表象領域・2008年度入学・代表者)
  • 茂山 忠亮(表象領域・2003年度入学)
  • 鹿島 萌子(表象領域・2008年度入学)
  • 角田 あさな(表象領域・2009年度入学)
  • 山口 隆太郎(表象領域・2013年度入学)
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