多様な「生」を描く質的研究会(2012年度)
院生代表者
- 青木 秀光
教員責任者
- 天田 城介
企画目的・実施計画
本研究の目的は、人のライフコースにおいて生じる様々な変遷を「プロセス」という観点から、より鮮明に捉えるための質的研究法の在り方について検討することにある。この目的を達成するための方法は、以下の通りである。
- 不定期にフィールドワークおよびインタビューを中心とした研究遂行に必要となる質的研究の方法論の体系的な修得のための研究会を行い、異なる研究フィールドにおける方法論上の課題について議論する。
- 並行して、「当事者研究」を一つのキーワードとして設定して、当事者研究の意義、及び可能性を探る。
- 年度末に公開研究会を開催し、各メンバーの一年間の研究成果を報告する。
活動内容
各々の研究発表を行う研究会を5月10日、6月18日、1月18日の3回、当事者研究についての文献購読を行う研究会を11月30日に行った。そして、年度末の2月10日には「質的研究における当事者性について考える」というテーマの公開研究会を開催し、各々が研究成果を発表し、やまだようこ生存学研究センター特別招聘教授、山本耕平産業社会学部教授がコメントを行った。
研究会で行われた研究発表は、里親家族の経験をインタビュー調査から検討したもの、難病患者のサポート・グループに関する研究、統合失調症の子を持つ親の経験をインタビュー調査から検討したもの、色覚検査に関する歴史研究から研究における「当事者性」を検討したものであった。
2012/05/10 13:00-18:00、至創思館409
赤阪麻由、炎症性腸疾患病者のケアのあり方:ピア・サポートに注目して
青木秀光、統合失調症を抱える子を持つということ
2012/06/11 15:00-20:00、至創思館411
由井秀樹、不妊治療を経て養育里親家族が形成されるプロセスに関する研究:就学前の里子を養育する里母の語りから
赤阪麻由、コミュニティ臨床という視点からの難病者のケア
合評会(天畠大輔,2012,『声に出せないあかさたな』生活書院.)
2012/11/30 15:00-18:00
批評会(宮内洋・今尾真弓編、「あなたは当事者ではない:〈当事者〉をめぐる質的心理学研究」北大路書房.)
2013/01/18 14:00-16:00、学而館202
赤阪麻由、「当事者性は「当事者」だけのものか ―難病サポート・グループの実践と研究を通して」
由井秀樹、「『当事者』による歴史記述の意義と課題:学校健診における色覚検査検査史を題材に」
2013/02/10 13:00-17:00 公開研究会「質的研究における当事者性について考える」 創思館301-302
青木秀光、「自己との向き合い:統合失調症の子を抱える親へのライフストーリー研究を通して」
赤阪麻由、「当事者性は『当事者』だけのものか:難病サポート・グループの実践と研究を通して」
由井秀樹、「『当事者』による歴史記述の意義と課題:学校健診における色覚検査史を題材に」
牛若孝治、「男性性の変容についてのナラティヴ・アプローチ:『自己物語の記述』の手法を通じて、トランスジェンダーを生きる過程を分析する」
成果及び今後の課題
今後の課題として以下の2点が挙げられる。
- 質的研究の根本問題である科学性や客観性につき、自己との関わりを通して考察すること。
- まずは議論を活発化させるために、どのような査読付き媒体で結果を提示するのか(現在においてはそれこそ査読者の「主観」によって棄却される多くの質的研究を用いた論文が存在することを鑑みて)考察する。
構成メンバー
- 青木秀光
- 赤坂麻由
- 窪田好恵
- 谷村ひとみ
- 天畠大輔
- 中村昌也
- 由井秀樹