マイノリティ研究会(2012年度)
院生代表者
- 梁 陽日
教員責任者
- 天田 城介
企画目的・実施計画
本プロジェクトは、立命館大学グローバルCOEプログラム「『生存学』創成拠点」の院生プロジェクト「地域社会におけるマイノリティの生活/実践の動態と政策的介入の力学に関する社会学研究」(2009年6月~2012年3月)の成果を継承して研究活動を進める。
マイノリティ研究は、マイノリティをめぐる差別・排除の実態、国家・行政や資本による政策・事業の内容や枠組み、「マイノリティ」を規定する知、そして差別・排除に抗う運動・実践、の連関を分析・考察することが求められている。本プロジェクトは、マイノリティをめぐる知が、差別・排除を補完・編成する社会的装置でもあるとの視点から、マイノリティ研究のあり方をメンバーの研究テーマ・フィールドから批判的に問い返す試みを目的とする。
具体的には、①2012年3月に出版した『差異の繋争点――現代の差別を読み解く』(天田城介・村上潔・山本崇記編ハーベスト社 http://www.arsvi.com/b2010/1203aj.htm)の公開合評会を通じ、マイノリティ研究の達成点と課題を明らかにすること。上記をふまえ、②新たな研究課題を設定し、共同研究を更に深めること。以上の2点である。
http://www.arsvi.com/o/m02.htm
活動内容
公開合評会「天田城介・村上潔・山本崇記編『差異の繋争点――現代の差別を読み解く』を読む」(立命館大学大学院先端総合学術研究科主催、マイノリティ研究会共催)の実施
日時:2012年6月5日(火) 18:00~20:30
場所:立命館大学衣笠キャンパス存心館2階705教室
企画概要:
- 執筆者による自著解題(目的・問題意識など)
村上 潔(先端総合学術研究科研究指導助手) - コメンテーターによる書評コメント
安部 彰(立命館大学衣笠総合研究機構特別招聘准教授)
安田 智博(先端総合学術研究科一貫制博士課程) - 全体討論
定例研究会の開催
- 第28回定例研究会(2012年12月18日(火)15:00~於立命館大学学而館2階201)
発表者:
- 梁陽日「夜間中学における教育とその変遷――大阪における取り組みを中心に」
- 由井秀樹「日本における非配偶者間人工授精に関する歴史的検討――なぜ1948年まではじめられなかったか?」
- 大野光明「大阪のなかの『沖縄問題』の『発見』――大阪沖縄連帯の会を事例に」
- 第29回定例研究会(2013年2月19日(火)15:30~於立命館大学学而館2階 201)
発表者:
- 牛若孝治「芸術活動における障碍のある人とない人との関係性――援助者・非援助者を超えて」
- 梁陽日「若者支援・特別支援教育の陥穽――善意による排除社会補完構造の考察」
成果及び今後の課題
第1に、公開合評会を通じてマイノリティ研究会の成果である『差異の繋争点――現代の差別を読み解く』(天田城介・村上潔・山本崇記編ハーベスト社、2012年3月)の達成点と課題を確認した。特に、マイノリティをめぐる言説、理論、政策的提言が、常に・既に福祉国家論の枠組みに親和的であらざるをえない現実に対し、批判的な距離を取ること、研究と実践を架橋することの必要性が再確認された。本合評会は先端総合学術研究科との共催で実施され、研究会内外の幅広い層からの参加を得るとともに、生存学の核心概念としてのマイノリティ研究のあり方に一石を投じたものと自負している。同時に、マイノリティの生き方の実態を記述するための方法論の構築については、十分に議論が深められなかったため、継続して今後の課題となったことを記しておきたい。
第2の成果は、新たな研究会メンバーを加え、ネットワークを広げられたことである。研究メンバーはアカデミズムの場のみならず、様々なフィールドに対して積極的に参与を行っており、日常的な研究活動を通じて広げてきたネットワークを活用しながら、様々な研究者や実践者が集う多様な場として研究会が運営されてきた。今後も、研究会が持つ多様性を基盤としたダイナミックな場としての意味を問いながら、さらに研究会を維持・発展させていきたい。
構成メンバー
- 大野 光明 先端総合学術研究科・公共領域
- 林 徳榮 先端総合学術研究科・公共領域
- 郭 貞蘭 先端総合学術研究科・公共領域
- 権藤 真由美 先端総合学術研究科・公共領域
- 酒井 美和 先端総合学術研究科・公共領域
- 白杉 眞 先端総合学術研究科・公共領域
- 西沢 いづみ 先端総合学術研究科・生命領域
- 矢野 亮 先端総合学術研究科・公共領域
- 梁 陽日 先端総合学術研究科・公共領域
- 吉田 幸恵 先端総合学術研究科・公共領域