草分け時代を生きた「精神病」者運動家の個人史保存(2012年度)

院生代表者

  • 白田 幸治

教員責任者

  • 立岩 真也

企画目的・実施計画

歴史哲学における歴史とは、過去の歴史的事実と歴史叙述からなるものとされる。歴史的事実とは、史料によって実証的に裏付けられる事実のことである。そして歴史的事実の一回性の連続を歴史叙述という。歴史叙述は、その過程において何を価値基準とし叙述するのかによって同じ史料を基礎としても全く異なる叙述となり得る。これまで「精神病」者運動の歴史は、体系的な研究がされていないため、断片的な記録が確認できる程度にとどまってきた。そして、断片的な「精神病」者運動史の記録も、戦後史、社会事業史の叙述に取り込まれ、医学モデルによる支配的な考えの成すままとされている。すなわち「精神病」者の歴史は、戦後史、社会事業史の言説の中で沈黙を強いられており、この沈黙を打ち破らない限り、「精神病」者がいかに歩み、生きてきたかを知り得ることはできない。
 本院生プロジェクトは、1970年代から1980年代前半の草分け時代を生きた「精神病」者運動家4人に対してインタビュー調査を行い、個人史(life history)の保存をする。運動家らは、既に高齢であり早急な個人史の保存が求められる。運動家らの個人史から「精神病」者運動の歴史と系譜を明らかにし、ついては社会事業史、戦後史の叙述へのカウンターヒストリーとしての「精神病」者運動史の体系化に一石を投じる。

活動内容

2012年8月23日、西山志郎インタビュー
2012年9月27日、松井秀彦インタビュー
2012年11月10日、山本潔インタビュー
2012年12月26日、分析ミーティング
2013年1月20日、報告書『「精神病」者運動家の個人史(1巻)』の発行。

成果及び今後の課題

報告書『「精神病」者運動家の個人史(1巻)』の発行。
現代思想への企画の持ちかけ。
桐原尚之が立命館人間科学研究27巻の公募論文に成果にかかる投稿をした。

構成メンバー

  • 白 田 幸 治 先端総合学術研究科 公共領域 2012年度
  • 桐 原 尚 之 先端総合学術研究科 公共領域 2012年度
  • 諸 岡   聖 先端総合学術研究科 公共領域 2012年度
  • 権 藤 眞由美 先端総合学術研究科 公共領域 2011年度
  • 窪 田 好 恵 先端総合学術研究科 公共領域 2012年度
  • 成 瀬 泰 樹 先端総合学術研究科 表象領域 2012年度
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