キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン

立命館大学大学院先端総合学術研究科
キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン

目次

0.はじめに

1.ガイドライン制定の趣旨

2.研究科の責任と構成員の義務

3.ガイドラインの対象

4.ハラスメントの定義

5.パートナーシップの基礎となる信頼関係

  1)教員・研究科の義務
  2)禁止される行為

6.パートナーシップ委員会(仮称)

  1)委員会の設置
  2)委員会の構成
  3)委員会の業務

7.相談室の開設に向けて

本文

0.はじめに

 大学の研究の力量が、大学院に結集した若手研究者、大学院生の鋭い問題意識と多様で自由な発想やそれらの能力にかかっていることは、大学内外の研究者、教育関係者の共通理解である。特に大学院生が研究者として成長していく途上でハラスメント等の人権侵害に煩わされることなく、活き活きと研究に専念できる真に「魅力ある大学院」を構築しえた大学こそが研究の力量を伸ばすことができる。
 立命館大学のセクシュアル・ハラスメントやアカデミック・ハラスメント(以下、キャンパス・ハラスメント)への対策は、全国あるいは世界の標準から見て立ち後れていたが、ようやく全学的なハラスメント対策に向けた制度的な改革の機運が芽生えつつある。
 立命館大学大学院先端総合学術研究科(以下、本研究科)では、本研究科院生会からの問題提起を受け、キャンパス・ハラスメントを議題とする協議会において率直な議論を重ねた。協議会での検討を踏まえ、本研究科はキャンパス・ハラスメント防止ガイドラインを制定する。ハラスメント防止のガイドラインが内実を持つためには、ハラスメントを受けた被害者に対して迅速に対応する相談窓口などの実効性のある機能が必要であり、時には調停あるいは処分等を検討し実行する権限を備えた全学的な組織が確立されなければならない。研究者養成を目指す本研究科は、事の重要さと迅速な制度化の必要性を鑑み、個別研究科レベルでの相談窓口の設立への模索を継続すると同時に、全学的な組織の設置についても提起していく。当面、本ガイドライン作成の場となった協議会の意志を継承する役割も含めて「パートナーシップ委員会」(6.参照)を発足させる。

1.ガイドライン制定の趣旨

 本研究科のすべての構成員は、安全、平等かつ快適な状態で研究、教育、就労ができる権利を有する。すべての構成員とは、教員・職員(いずれも常勤・非常勤を問わない)・院生(本研究科のプロジェクト等に関わりのあるすべての者。以下、「院生」という)である。本研究科はセクシュアル・ハラスメントやアカデミック・ハラスメント等の人権を侵害し、個人の尊厳を損ねる行為を決して容認しない。様々なハラスメントの防止に留まらず、プロジェクトを円滑に推進するための信頼関係の構築を励行する。ここでいうプロジェクトとは、本研究科の研究教育活動の基本形態を指し、狭義の「プロジェクト研究」および、共同で開催されるシンポジウム等の活動を含む。こうした研究教育活動において万一、ハラスメント等が発生した場合に備え、このガイドラインを定める。
 院生には何らかの独創的な視点が認められ、既に教員を含む他者を凌ぐ何かを有するプロジェクト・パートナーである。教員は院生の可能性を謙虚に受け止め、そこから学び、それをより伸ばすという姿勢を保持せねばならない。また、大学職員と良好な関係を形成することは、プロジェクトの推進にとって不可欠であり、院生・教員は大学職員と協力し、本研究科全体が新たな領域を切り開く有機的な教育研究システムとなるよう努力する。
 本研究科は、人文科学と社会科学の刷新と総合を倫理的な原点「核心としての倫理」から、自然科学の成果を受け止め、人文科学と社会科学の刷新と総合をはかり、よりよく生きるための知の再構築を推進することを使命と考えている。それにふさわしい研究環境を整えるために、他人の人格を傷つける言動を行わない決意を表明するとともに、そのような言動を防止するための万全の配慮と不断の努力を行うことを宣言する。

2.研究科の責任と構成員の義務

 本研究科のすべての構成員は、相手の立場を尊重することに努めるとともに、信頼関係を損ない、人としての尊厳を傷つけるハラスメント等を起こさないこと、防止することに努める。本研究科教授会は、ハラスメント等の人権侵害に対して厳しい態度で臨み、快適な研究・教育・職場環境を作る努力を行う。研究科の教学全般に責任を負う研究科長は、ハラスメント等の防止と対策に関する研究科全体の施策全般についても責任を負い、また各テーマ領域責任者等は、具体的な施策や措置の実施について責任を負う。

3.ガイドラインの対象

 1) このガイドラインは、本研究科の構成員のすべてを対象とする。ただし、教員・職員については離職後、院生については、研究科を卒業・退学などで学籍を失った後においても、在職中もしくは在学中にうけた被害についての訴えを申し出ることができる。
 2) このガイドラインは、ハラスメントが本研究科の構成員相互間において問題となる場合には、学内・外、授業中・外、課外活動中・外、勤務時間内・外など、それが起こった場所・時間帯を問わず、適用される。
 3) ハラスメントが、本研究科の構成員と本研究科の構成員以外の者との間において問題となる場合には、当事者間に職務上の利害関係のあるときに限り、このガイドラインを適用する。したがって、教員が大学等の外において行う講演・講義、あるいは、院生のアルバイト先での問題等についても、このガイドラインを適用する。ただし、加害者が研究科の構成員以外の者であるときには、このガイドラインの手続きを準用し、研究科として解決のために必要かつ適当な措置をとるよう努力する。

4.ハラスメントの定義

 ハラスメントとは、性別、社会的身分、人種、国籍、信条、年齢、職業、身体的特徴等の属性あるいは広く人格等に対する言動によって、相手に不利益や不快感を与え、あるいはその尊厳を損なう人権侵害である。アカデミック・ハラスメントおよびセクシュアル・ハラスメントとは、教育上の優越的地位にある者が継続的関係において行う不適切な言動・指導・待遇によって、相手の研究意欲・研究環境を阻害し、あるいはその後の人生においても悪影響を残す人権侵害である。この場合、意に反する他者の人権を侵害する性的言動を伴うものを特にセクシュアル・ハラスメントと言う。これらは、その生起する状況や内容に違いはあるが、何らかの優越的地位に依拠し、権力関係の中で生じるものであり、広義にはパワー・ハラスメントと言える。ハラスメントの認定は、被害者の判断を基準とする。

5.パートナーシップの基礎となる信頼関係

 プロジェクト・パートナーである院生とプロジェクト・リーダーである教員の適正な関係は信頼関係の上に構築される。とりわけ研究活動開始の初期は、信頼関係の構築が重要である。その前提として、ハラスメントの防止とその根絶のための環境づくりが行われなければならない。教員は、院生の言葉を注意深く傾聴し、院生の主題の核心を十分に理解し、発展の可能性及び行き詰まっている点を慎重に判断する。必要に応じて、院生とともに探求を進める姿勢を明確に示すことが基本姿勢となる。具体的に守るべき行動規範は、信頼関係の構築、維持、発展を促す規範である。大別すると、教員・研究科が積極的にすべき義務と絶対にしてはならない禁止行為がある。

1)教員・研究科の義務
院生の能力向上への寄与
 1.必要に応じた院生への助言指導を行う。
 2.適切な文献、学会、研究会、雑誌媒体等の紹介をする。
 3.院生に必要な推薦書の作成をする。
 4.院生が研究成果を発表する適切な機会を保障し、その能力向上の支援を行う。

教育機会の平等の保障
 5.日本語を第一言語としない院生には、特にその必要に応じた配慮を行う。
 6.遠隔地に居住する、長時間働いているなどで大学にあまり来ることができない院生には、メールなどの通信手段を使って、充分な指導の機会を保障する。
 7.障害を持つ院生には、必要な配慮のもとに指導を行う。
 8.演習、予備演習、研究科内の良好な人間関係を保つよう寄与する。

プロジェクト遂行のための配慮
 9.プロジェクトの計画実践を通して院生の能力向上に寄与し、そのための必要な配慮を行う。
 10.教員への助言・資料提供、プロジェクトへの貢献をした院生の名前を公的に明示する。
 11.プロジェクト等の遂行には、院生に事前事後の充分な説明を行い、必要に応じて計画を変更する。
 12.万一、プロジェクト等の遂行に何らかの問題を生じた場合には、院生の努力を無駄にしないよう、必要に応じてプロジェクト等の軌道修正を行う。

研究科全体に関わること
 13.論文審査や講義の評価の透明性を保ち、院生からの異議申し立てを真摯に受け付ける。
 14.プロジェクト推進にあたって、研究科に必要な制度やシステムの整備を行う。

2)禁止される行為
 以下の具体例は「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」資料などを参考にしている。
1.学習・研究活動妨害(研究教育機関における正当な活動を直接的・間接的に妨害すること、何らかの契約不履行)
 例)学会などへの出張を正当な理由無く許可しない/プロジェクト等の遂行に十分な事前事後説明を行わず、結果として研究時間を奪う、など
2.卒業・修了・進級妨害(院生の進級・卒業・修了を正当な理由無く認めない、正当な理由無く単位を与えない)
 例)理由を示さず単位を与えない、など
3.選択権の侵害(就職・進学の妨害、望まない異動の強要など)
 例)本人の希望に反する学習・研究計画や研究テーマを押しつける、など
4.指導義務の放棄、指導上の差別(教員の義務である研究指導や教育を怠ること。また指導下にある院生を差別的に扱うこと)
 例)「放任主義だ」と言いセミナー・ゼミを開かず、研究指導やアドバイスもしない/自分が興味のあるテーマで研究する院生にのみ指導するなどの指導の上で差別がある、など
5.不当な経済的負担の強制(本来研究費から支出すべきものを、院生に負担させる)
6.研究成果の搾取(研究論文の著者を決める国際的なルールを破ること、アイデアの盗用など)
 例)院生のアイデアを使い、こっそり論文・発表をする、など
7.精神的虐待(不適切な発言やメール・相手の主張の不十分な点を揶揄する。本人がその場に居るか否にかかわらず、院生を傷つけるネガティブな言動を行う。発奮させる手段としても不適切)
 例)「ゼミに出る資格がない、出て行け」「厳しく言うのは愛情だ」「女は研究者に向かない」など
8.身体的暴力(殴る・蹴る)
9.誹謗、中傷
 例)職務上知りえた院生の個人情報を他の教員や院生に告げてまわり、結果として大学で当人の居心地を悪くさせる
10.不適切な環境下での指導の強制
 例)指導するからといってホテルの一室に呼びつける
11.優越的地位・権力関係の濫用
 例)日曜に研究室に来ないと留年させるなどの不当な規則の強制/食事に付き合わないと指導しないなどの親密な関係の強要/研究データの捏造・改ざんの強要などの不正・不法行為の強要
12.プライバシー侵害
 例)院生が望んでいないにもかかわらす、恋人のことなど根掘り葉掘り聞く
13.その他
 例)自らの不適切な言動について、言い訳をするだけで改善をしない(被害が深刻になる可能性)/教員同士の個人的な確執による鬱憤を、相手が指導する院生へ不利益を被らせることで晴らそうとする/教員間の権力関係が院生に影響を及ぼす(権力のない教員についた院生への悪影響の可能性)、など

6.パートナーシップ委員会

1)委員会の設置
 本研究科は、ハラスメントに関する情報の収集および研修、ハラスメントに関する学内外機関との連携、協力等を行うため、「パートナーシップ委員会」(以下「委員会」)を置く。教授会は委員会の意見を尊重する義務を負い、また教授会は委員会の意見について話し合った内容を委員会に対して回答する義務を負う。

2)委員会の構成
 院生会の代表者2名と教授会の代表者1名および副研究科長の計4名(男女比は1:1となるよう配慮する)が委員会を組織する。
 教授会の代表者は院生の推薦を得た教授会のメンバーを教授会の承認を得て決定する。委員会は必要に応じて大学職員の参加を求める。委員会の判断により必要に応じて外部の専門家への諮問あるいは会議への参加を求めることができる。

3)委員会の業務
1.人権擁護の意識徹底の活動
 新入生オリエンテーションでの説明(院生会)、リーフレットの作成、研究科構成員すべてを対象とする継続性を持たせた研修(外部専門家の指導)、学生便覧など(必要に応じて大学職員と協力)、カリキュラムの中での人権教育の取り組みの検討(委員会全体)などハラスメントへの問題意識を高める活動を主導する。また全学的な組織および各研究科レベルでの相談窓口の設置へ向けた学内での問題を継続的に行う。
2.ガイドラインの定期的な見直し
 最低半期に1回は、ガイドラインの見直しを継続的に検討する。
3.その他
 院生会の代表者、あるいは教授会の代表者から開催の要請があった場合には、直ちに委員会を開催する。

7.相談室の開設に向けて

 本研究科は、院生が研究を深めうるプロジェクト等への参加を通じた研究者養成を原則とする。プロジェクトの円滑な遂行には、プロジェクト・パートナーである院生とプロジェクト・リーダーである教員との信頼関係の構築、維持、発展が必要である。より良い適正な関係へとしていくために、本研究科はハラスメント等の相談室を設置することを目標とする。相談室の機能の詳細は、今後「パートナーシップ委員会」を中心に詰めの作業を続行する。現時点において、以下を構想している。
 相談室には、研究科とは利害関係のない、人権擁護に精通した専門家を相談員として配置する。相談員はハラスメント等の被害者のすべての過程における主体性、意思を尊重する。守秘義務を遵守し、プライバシーを保護する。また、相談等に関わった人すべてに対する二次被害を防止する。相談員の具体的な業務は、研究科構成員の訴えを聞き受け止めること、被害者の救済方法の整理・確認、被害者のカウンセリング、必要な複数の窓口の照会・選択肢の提示、第三者からの相談の受付等である。相談員以外の教職員も、相談した本人が望んだ場合には受けた相談を相談室に連絡することができる。

 このガイドラインは、2006年3月28日の教授会承認および「パートナーシップ委員会」の発足を条件として発効し、パートナーシップ委員会で継続的な見直しが行われ、その度に更新される。

このページに関する問い合わせ

立命館大学大学院先端総合学術研究科
〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1
衣笠独立研究科事務室 先端総合学術研究科気付
TEL:075-465-8348 FAX:075-465-8364
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