農山漁村文化研究会(2024年度)

院生代表者

  • 長谷川 莉帆

教員責任者

  • 阿部 朋恒

概要

 本研究会は、日本および中国における農山漁村をはじめとする人口希薄地域(以下、農村と略記)の現状と課題に関心を寄せる院生が集い、各々が独自の学術的アプローチを涵養するための基礎的素養と洞察力を鍛えることを目的とする。
 「高齢化先進国」である日本において、なかでも農村地域の高齢化率はとりわけ高く、存続が危ぶまれる集落が遍在している。しかし一方で、地元住民自身が農村の活力をとり戻そうと模索しながら空き家や遊休施設(例:廃校)の活用を実践したり、都市の移住者がシカなどの害獣を素材にしたスモールビジネス(例:ジビエ料理店の開業)の起業を行うなど、新たな動きも見られるようになって久しい。このような日本における住民主体のボトムアップ型地域創生の取り組みは、今後、超高齢社会の到来をひかえる先進諸国の注目を集めている。
 他方、中国に目を向けると、都市部が急速な経済発展を遂げる中で、農村に暮らす人々の経済的困窮が是正されない状況が社会問題としてクローズアップされる。そのような、拡大する都市と農村との格差を是正すべく、農村へのエリート人材の派遣や、農林水産業の生産や流通にまつわるテクノロジーの刷新・先端化など、中国では国家主導での人材・技術の「大量動員」が行われ、ドローンやAI、天候操作などを駆使した世界に類を見ない生業が出現しつつある。
 本プロジェクトでは、以上のようにそれぞれの文脈において転換期を迎えている日中の農村の現況および研究動向について両国出身のメンバーが協働し比較検討を進めることで、従来にない研究視座を探る。加えて、類似した研究関心と異なる出自や学術的背景を持つ院生同士が集い、該当分野の基礎文献の講読や研究動向整理を共同で行うことで、効率的かつ網羅的に知識を身につけることができると考えている。
 さらに、身につけた知識を机上の空論としないためにも、現場との対話を通じて研究の視野を開いていく経験を積むことも企図している。具体的には、近畿・中国地方の農村地域に居住しつつ現地課題に日々向き合う実践家の方々との意見交流会を開催し、この勉強会の成果を報告すると共に、実地調査を通じた現場への共感的理解に基づいて、各々の研究メンバーが研究の視座を再構想するための機会とする。また、本研究科と研究協定を締結している雲南大学民族学与社会学学院の教員の来日に合わせ、2024年 11 月には日中の農村地域振興に関するワークショップの開催を予定している。

活動内容

構成メンバー

長谷川 莉帆
曹 旭东
片平 深雪
近藤 千尋
勝又 栄政
岳 恒萱
丁 紫燕
閔 子軒

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