エスノグラフィー研究会(2022年度)
院生代表者
- 酒向 渓一郎
教員責任者
- 阿部 朋恒
概要
本研究会の目的は、エスノグラフィーの批判的読解、および実地での訓練調査を通じて、研究会参加者のフィールド調査力を向上することにある。エスノグラフィーとは、フィールドワークという経験的な調査手法を通じて、人びとの社会生活について具体的に書かれた記述のことを指す。近年、人類学・社会学を問わず、さまざまな分野において研究手法としてエスノグラフィーが導入されている。本研究会に参加する院生のフィールドもさまざまであるが、全員が参与観察や生活史の聞き取りに取り組んでいるという共通点をもち、収集したデータからエスノグラフィーを書くことになる。これまでに描かれてきたさまざまなエスノグラフィーの読解と訓練調査を通じて、参加者のフィールド調査力を向上する機会としたい。そこで本研究会では以下の2つの目標を設定する。
➀様々な分野で描かれたエスノグラフィーの中から課題図書を選び、月1~2回の読書会を開催する。
➁研究会顧問である阿部の引率の下、京都市北区の里山において合宿を行い、フィールドワークの訓練を目的とした簡易的な調査を行う。そこで得たデータについては、検討会を開催し、調査内容やインタビュー方法について参加者の間で相互検討を行う。
活動内容
おおよそ月2回、レジュメ担当者を決めて課題図書を輪読した。
参考のためこれまで輪読した書籍の一部を下記に記す(順不同)。
ブロニスラウ・マリノフスキー(2010)『西太平洋の遠洋航海者』(増田義郎訳)講談社学術文庫
アリス・ゴフマン(2021)『逃亡者の社会学』(二文字屋脩他訳)亜紀書房
宮前良平(2020)『復興のための記憶論』大阪大学出版会
ロイック・ヴァカン(2013)『ボディ&ソウル』(田中 研之輔他訳)新曜社
成果及び今後の課題
本研究の成果としては、分野横断的にエスノグラフィーを輪読することができたことがあげられる。たとえば人類学を志す院生が社会学者やその他の分野の研究者が描いたエスノグラフィーを読む機会を得ることができた。このように普段はあまり馴染みのない分野にて描かれたエスノグラフィーの内容を、時間をかけて検討、批判的に読み込むことができたのは、将来的に本研研究会の参加者がエスノグラフィーを描く際の参考となったといえる。他方、今後の課題としては当初予定していたフィールドワークの訓練合宿が行えなかったことである。このことは、コロナ禍が比較的落ち着いたことで本研究会参加者の多くが自身のフィールドに戻ったため、合宿参加者の予定を合わせることが困難であったことが大きい。しかし、合宿の意義はあるという意見は参加者のなかで一致しているため、今後研究会を継続する場合訓練合宿を行いたい。
構成メンバー
酒向 渓一郎
柴田 惇朗
坂本 唯
孔 文浩
李 思航
曹 旭東
清水 美春
片平 美雪
吉川 由貴
西本 春奈