incurable研究会(2022年度)
院生代表者
- 中井 良平
教員責任者
- 後藤 基行
概要
本研究プロジェクトの目的は、希少難病、慢性疲労症候群など医学的な地位が定まっていない「論争中の病」、医学で明確に説明できない病を患う人々が、生活を送る上で必要なサポートを当事者の視点から明らかにすることである。
希少難病や論争中の病は、医療者にもよく知られておらず、診断までに時間を要することが多い。さらに診断されても治療法はなく、支援制度や可能なサポートについての情報提供も十分になされていない状況にあると考えられる。加えて、検査に異常がないなど、医学で明確に説明できず、診断がつかないために医療機関をさまよい続ける病者も少なくない。
現在の医療制度は、病名が何らかのかたちで確定されることを前提に設定されており、これらの当事者は、医療や福祉のバックアップを受けられないまま、制度のすき間に追いやられている可能性がある。実際、当事者の置かれた状況については、社会的な認知がほとんどなされていない現状がある。
当事者や支援者が置かれた状況の一端について、インタビュー調査を通じて明らかにし、当事者らのニーズを丹念に拾い上げていきたい。どのような公的サポート、制度的な改善が必要であるかを考察し、当事者が直面する困難を、診断名や診断の有無に左右されることなくサポートできる仕組みを考えたい。
活動内容
・インタビュー調査(2022年度は3名)
・行政の支援担当者・メディア関係者などを交えた意見交換会の実施
・定期的な勉強会での文献講読
成果及び今後の課題
インタビュー調査に応じていただいたのは、診断や制度の利用までに時間を要した病者当事者・そのご家族の方で、その困難や、医療者・社会などから向けられる偏見の目などについてのお話を伺うことができた。その貴重な記録は、今後話し手の方との協議の後、研究・考察に用いさせていただく。その一部は、生存学研究所サイト「arsvi.com」で公開が予定されている。
また、昨年度は行政の支援担当者の方を交え、複数回の意見交換会を行い、既存の制度の「使えなさ」について、支援を行う側からの声を聞くことができた。
今後の課題としては、調査の規模を広げていき、質的・量的どちらの点からも、「制度の谷間」に置かれた病者らの困難を構成する要素を抽出可能とするような、データを集めていくことである。
2022年度購入書籍: 『〔新版〕現代医療の社会学 :日本の現状と課題』 中川 輝彦 ・黒田 浩一郎 編
構成メンバー
中井 良平
戸田 真里
西岡 知香
劉 心悦
高橋 初
栗川 治
寺田 准子
活動歴
2021年度の活動はコチラ