映像と現代音楽研究会(2022年度)

院生代表者

  • WANG Qionghai

教員責任者

  • 千葉 雅也

概要

 本研究会は、現代音楽が映画、アニメーションなどの大衆文化の中で使用され、その構造的な特徴から離れ、イメージ的に聞かされることに焦点を当てる。現代音楽が映像産業に転用される歴史や受容、とりわけその転用の理論的根拠を中心に、現代音楽及び映像音楽の関係性を探究し、映像および音楽研究の分析、研究能力を向上させることを目的とする。
具体的な内容については、映画音楽および現代音楽についての文献講読およびその発表を通じて議論を行う。月1回のスパンで研究会を実施し、映像音楽および現代音楽の概観を習得するとともに、院生メンバーそれぞれの研究テーマに応じた知識を獲得する。また、ゲスト講師をお招きし、講演会と質疑応答を行い、専門的な知見をいただくことで、メンバーのさらなる研究能力の向上を図る。
 本研究会の意義は、音楽学、美学、表象文化論といった学際的な視点をもとに「映像」及び「現代音楽」をメディアと音楽の関係性という視点で議論することにある。また、レジュメ制作・報告による発表能力の向上、研究会運営のプロジェクト企画能力の養成、そして第一線の研究者と交流を通して、研究力を全般的に向上するという意義がある。

活動内容

文献購読
 今年度では日本映画の中で現代音楽を使用する代表的な人物である武満徹の著作『映像から音を削る』を中心に文献購読し、武満の映画音楽の手法を議論しました。
 日期:7月7日、10月29日 場所:ZOOM

研究発表会
 各メンバーが各々研究テーマについて研究発表をし、その内容を議論しました。

高畑和輝 「1970-80年代の武満の創作論にみる「武満トーン」の研究」8月3日 ZOOM
WANG qionghai 「アニメーション特有の音響について」12月10日 ZOOM
WU zewei 「中国映画における映像音響について」1月7日 ZOOM

講師講演会
 映画音響及び武満徹研究を専門とするゲスト講師柴田康太郎を招いて講演会を開き、武満徹を中心とする戦後日本映画の音響的特徴について講演をしていただき、その内容を議論しました。
日期 9月5日 場所:究論館 プレゼンテーションルームA (ZOOM併用)

成果及び今後の課題

<成果>
 戦後日本の映画音楽において、現代音楽的な要素を取り入れることで代表的である武満徹の仕事を映像鑑賞、文献購読、講師講演会を通して議論した結果、映像音楽における雑音などの効果音の使用、またそれを分析する現代音楽におけるミュージック・コンクレートの視点の重要性を深く理解した。
 また、各メンバーの研究発表を通して、このような雑音や効果音を音楽にする流れは、戦後日本の映画音楽だけではなく、戦前のアニメーションでも文脈が蓄積しており、2つの領域の背後に共通するのは、音を聞き取る大衆が置かれるメディア環境の変遷があることを理解した。
 以上の二点を踏まえて、映像音響と現代音楽について、その歴史的な経緯及びそれを形成させたメディア環境について、今後さらなる研究を展開するための見識を得ることができた。

<今後の課題>
 本研究会は本来講師講演会を2回計画していたが、講演料や移動経費の予測が甘かったため実現できなかった。資金計画の面を見直し、さらなる研究会運営能力の向上が今後の課題である。

構成メンバー

高畑和輝
WANG Qionghai
西川秀伸

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