「ゼロ世代」WEBコンテンツ保存プロジェクト

院生代表者

  • 向江 駿佑

教員責任者

  • 竹中 悠美

概要

 本プロジェクトは、2019年度より本学アート・リサーチセンターの「日本文化DH拠点研究拠点形成支援プログラム」の一環として継続している「「ゼロ世代」WEBコンテンツ保存プロジェクト」(ゼロプロ)を土台とし、その成果の応用の観点から異なる方向で発展させるものである。ゼロプロでは、今日のオンライン・エンタテインメントにおいて不可欠なものとなっているユーザーの創造的参加の源流を、インターネットの一般利用が普及した1995年頃から2000年代にかけての自主制作ゲーム・動画・アートなどとその批評言説にもとめ、それらのメタデータおよび現物の保存を試みてきた。その成果として現在までに約750タイトルのメタ・データベースを作成している。
院生プロジェクトとしては、①今年度さらに拡充予定の上記データベースについて国内外の研究者との共同研究の可能性を開くことと、②WEBコンテンツとしてのゲーム、動画、ドラマやアニメの歴史研究および批評に向けて、収集データの分析と応用の段階に進むための成果公開や議論の場の構築を目指すものである。①では韓国や中国でのコンテンツの収集及び研究者との交流をはかり、②では対面ないしはオンライン会議でのワークショップを開催し、得られた成果を学会等での報告やアートリサーチセンターのサーバーにアップロードするかたちで公開することを目的とする。

活動内容

 公開データの作成に向け、今年度は収集したコンテンツのメタデータ化の範囲や手法の検討を中心に、設計部分に重心をおく。疫病の蔓延により留学生メンバーの入国が大幅に遅れる見込みであることから、キャンパス閉鎖期間である春学期はZoomなどで打ち合わせを重ねつつ、各自担当国のWeb文化としてのゲーム、動画、ドラマなどにかんする資料収集をおこなう。ただし新入生の張にかんしては修士論文の構想を固めることを優先するため、今年度はコンテンツの収集については補助的な役割とし、作業手順の共有や定期ミーティングへの継続的な参加によるプロジェクトの運営方法の理解に主眼をおく。
 秋学期以降は、「ゼロ世代」の日韓それぞれの作品群とローカル・コンテクストについての研究会を開催し、双方の分析についての比較検討と統合をおこなう。また、メディア研究にかんする情報は作品現物とはことなり保存や信頼性の観点からいまだ紙媒体の参照が必須であること、本研究にかんするマルチメディアな展覧会が開催された場合には現地調査も必要となることから、国会図書館とIAMAS、ICC、および可能であれば訪問時期に開催される各種メディア芸術関連イベントの調査をおこなう。研究成果は8月と2月に開催されるアート・リサーチセンターでの報告会のほか、例年3月頃におこなわれる日本デジタルゲーム学会等、メンバーの参加する各学会での報告を予定している。

成果及び今後の課題

 上述のとおり本プロジェクトはアート・リサーチセンターの同名プロジェクトと連携していることから、8月の「ARC Day 2020」および2月の「文部科学省国際共同利用・共同研究拠点「日本文化資源デジタル・アーカイブ国際共同研究拠点」・ 研究拠点形成支援プログラム 研究プロジェクト/2020年度成果発表会」にて成果を報告したほか、向江・森・ムンの共著で『アート・リサーチ』21号に研究ノート(「WEBコンテンツから〈ゼロ年代批評〉を逆照射する——クリエイションとジェンダーを中心に」)を投稿した(3月刊行)。さらに本プロジェクト単体での活動として、21年2月25-6日にかけて、国立国会図書館およびICCにおいてデジタルコンテンツの収集・管理・公開にかんする現地調査をおこなった。とくに前者においては、職員でデジタルアーカイブ学会の会員である井上那智氏をはじめとする関係者各位にインタビューや閉架書庫を含む館内の案内などでご協力いただいた。さらに3月には、デジタルゲーム学会において向江が報告をおこなった。今後は先送りにした中国語圏のコンテンツの追加や、システム整備の関係でペンディングされているアート・リサーチセンターのサーバー上でのデータベースの公開を実現したい。

構成メンバー

向江 駿佑
森 敬洋
ムン ゼヒ
張 芸馨

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