映像人類学先端研究会—人類学とポエティクス—(2020年度)
院生代表者
- 福田 浩久
教員責任者
- 小川 さやか
概要
多様化する複合的なメディア状況のなかで人類学を考えてきた本研究会も三年目になる。「制作」をテーマにすえた昨年度の問題意識を引き継ぎ、今年度は「人類学とポエティクス」について思考する。人類学はその草創より、狭義の科学から逸脱するポエティックな制作に手を染めてきた。「不可量部分」の記述に格闘したマリノフスキーしかり、文学的な「第二の本」の執筆が所与とされていたフランス人類学しかり。この傾向はメディアが複合的になった 21世紀において一層拡張している。そうしたなか、本研究会では、人類学とポエティクスの理論に焦点を当てる。古層から掘り起こし、「文化を書く」や現象学的人類学の理論、芸術的な人類学への批判、最新のマルチモーダル人類学までおさえることで、科学と芸術、人類学を再定義し、研究会員各自がより先鋭な人類学制作を達成できるようになることを目的とする。
参考文献:クリフォード、マーカス(編)、1996、「文化を書く」、紀伊國屋書店. マリノフスキ、2010、「西太平洋の遠洋航海者 : メラネシアのニュー・ギニア諸島における、住民たちの事業と冒険の報告」、講談社. Debaene. 2014. Far Afield: French Anthropology between Science and Literature. The University of Chicago Press.
活動内容
講師は当初の予定通り濱口竜介氏を招聘した。「手について」と題した3日間にわたるワークショップでは、はじめに濱口氏による手(身体)と映像についてのレクチャーを行い、その後、参加者それぞれのフィールド経験・研究内容に基づいて、発表を行ってもらい、議論をした。定期的な輪読会ではSansi, 2015, Art Anthropology and the Gift、Debaene, 2014, Far Afield: French Anthropology between Science and Literature、クリフォードとマーカス編, 1996,『文化を書く』の三冊を丁寧に読み込んだ 。
成果及び今後の課題
濱口氏によるワークショップは大変実りの大きいものとなった。撮る撮られるというカメラが創造する関係に人一倍鋭敏な濱口氏ならではの考察を受けて、参加者それぞれが自身の専門領域から発表した映像も非常に多角的で、映像と身体というテーマを深めて考察するのにこれ以上適したものはなかった。月々の輪読会では上記のように三冊の本を時間をかけて読み、4月にはAmerican Anthropologist誌のMultimodal Anthropology宣言の論文を読む。人類学とポエティクスに関する理論という当研究会のテーマに即していえば、参考文献は膨大にあるので、着実にじっくりとしかし、歩を早く読み進めて、早々に自身の研究に反映していけるようにしたい。
構成メンバー
福田浩久
木田真理子
柴田惇朗