小泉 義之:2016年度業績一覧

論文/エッセイ

・「異性愛批判の行方――支配服従問題の消失と再興」堀江有里他編『〈抵抗〉としてのフェミニズム[生存学研究センター報告24]』立命館大学生存学研究センター、pp. 226-249
・「デカルト――存在と実存:「私」と「現」における」秋富克哉他編『続・ハイデガー読本』法政大学出版局、pp. 69-76
・「不幸を追求する権利」(『ヒメアノ~ル』評)『映画芸術』66(2)、no. 455、5月号、pp. 20-21
・「競技場に闘技が入場するとき」小笠原博毅・山本敦久編『反東京オリンピック宣言』航思社、pp. 216-228
・「過渡期の精神」『現代思想』44(17)、9月号、pp. 60-72
・「真理の探究における同伴者――木村敏の離人症論に寄せて」『現代思想』44(20)、11月臨時増刊号、pp. 226-237
・「おフランスの現代思想ざんす――「真理の殉教者」としてのイヤミ」『ユリイカ』48(15)、11月臨時増刊号、pp. 84-89
・「反戦運動の破綻の後に――ダーク・ドゥルーズに寄せて[応答2]」アンドリュー・カルプ『ダーク・ドゥルーズ』大山載吉訳、河出書房新社、pp. 185-194
・「服従と恥辱――ドゥルーズ/ガタリの二つの政治哲学」「『ダーク・ドゥルーズ』刊行ブックフェア」(紀伊國屋書店新宿本店)配布パンフレット
・ “The Theory and History of the Subject and Domination of the Self and Others: From Althusser to Foucault,” ZINBUN No. 47 2016

対談

「いまほど面白い時代はない」(篠原雅武と)篠原雅武編『現代思想の転換2017――知のエッジをめぐる五つの対話』人文書院、pp. 39-81

小川さやか:2016年度業績一覧

書いたこと

【図書】
・『「その日暮らし」の人類学―もう一つの資本主義経済』、光文社新書、2016年7月
・「機略に満ち溢れたインフォーマル経済―タンザニアの模造品交易を事例に」稲賀繁美編『海賊史観からみた世界史の再構築』思文閣出版、2017年、pp.296-305.
【論文、総説、社説など】
・「上半期の収穫から」『週刊読書人』2016年7月22日号
・「コピー・ケータイの道義性―もうひとつの資本主義をめぐる人類学」『SYNODOS』2016年7月29日(http://synodos.jp/international/17513)
・「歓待と無関心のあいだ」『考える人』2017年冬号、2016年 
・「日本人の忘れ物知恵会議ー「見失っている人間個人の余裕」」『京都新聞』2017年元旦号
・「不透明な未来を見据えた「ゆとり」を育む社会関係」『教育と文化』86号:38-43、2017年

話したこと

【学会、国際ワークショップ等】
・(招待講演)「Living for Todayの人類学ー不確実な世界を生きぬくための知恵」成安造形大学キャリアサポートセンター、滋賀県・大津市、2016年4月
・(国内学会)「「負債」から「借り」へ―タンザニアにおける携帯を通じた送金システム(M-pesa)を事例に」日本アフリカ学会第53回学術大会、日本大学生物資源学部、神奈川県・藤沢市、2016年6月5日
・(国際ワークショップ)”Copy Mobile Phone, Tanzania and China”, in International Workshop, Low-end Globalization on Three Continents, Chinese University of Hong Kong, Hong Kong, China, 2016年11月1日.
・(招待講演)” The System of Circulating “Dept” among Friends: The Business Practices and Communatility of Tanzanian Dealers in Hong Kong and China, Chinese University of Hong Kong, Hong Kong, China, 2017年3月10日
【その他、新聞報道、メディア出演など】
・「アフリカの路上で古着を売ってみた」僕らの未来を広げるWEBマガジン『SEKAI』(東進)http://toshin-sekai.com/intervie
・テレビ NHK 「新世代が解くにっぽんのジレンマ「都市と地方”見えない分断線”とは?」」9月18日放送
・「Living for Today 世界にはこんな生き方もある」『Wedge Infinity』 2016年10月20日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7993
・ラジオFMノックファイブ 木村達也「ビジネスの森」11月13日、11月20日の2回放送 https://courrier.jp/columns/80293/
・「「その日暮らし」の生き方・経済」朝日新聞、2016年12月28日夕刊
・共同通信配信⇒「その時々で支えあう社会」山陽新聞(1月22日) 「適度に支えあう緩やかな関係性」山梨新聞(1月21日)「ばくち的人生のタフさ」高知新聞(1月19日)
・「人口7割が「定職ナシ」でも不幸とは限らない」東洋経済オンライン 2017年3月7日
【その他 メディア報道】
・「『「その日暮らし」の人類学』インフォーマル経済の現実とは」(橋爪大三郎氏)日経新聞 2016年9月4日朝刊・「『「その日暮らし」の人類学』日本人の仕事間を疑う」(丹敬介氏)読売新聞 2016年9月4日朝刊・「タンザニアの行商人に学ぶ「その日暮らし」の経済学」(山本尚紀氏)JBPress 2016年10月4日・「『「その日暮らし」の人類学』心のまま タンザニア社会」(栗原康氏)東京新聞・中日新聞 2016年11月6日・「紀伊国屋じんぶん大賞2017―読者と選ぶ人文書ベスト30」共同通信PRワイヤー 2017年1月12日

学会における主な活動(所属学会・現在務める委員等)

(所属学会)日本アフリカ学会,日本文化人類学会,関西社会学会
(学会での活動)日本文化人類学会評議員
(編集委員等)京都大学人文科学研究所紀要『コンタクト・ゾーン』編集委員
(共同研究員)国際日本文化研究所『21世紀10年代日本の軌道修正』(代表:稲賀繁美)

海外出張(後期から学外研究)

・2016年8月にタンザニアに渡航し、タンザニア北西部のアルーシャ市と南部のマフィンガ市における森林資源の流通・活用について調査を実施した(資金:科学研究費補助金A代表池野旬京都大学のプロジェクト)。
・学外研究のため、2016年10月1日から2017年3月31日まで、香港中文大学人類学研究室に所属し、受け入れ研究者のゴードン・マシューズ教授ほかとのディスカッション、国際ワークショップの組織などを行った。また、香港・中国に滞在するアフリカ系ディーラーや交易人の商行為、組合活動等に関する調査を実施した。
・2017年2月13日から2月28日までタンザニアに渡航し、香港・中国で商品を買い付ける交易人たちのオフィスを訪問し、タンザニアでの販売の様子や組合活動について調査した(資金:科学研究費補助金若手A)。

千葉雅也:2015年度業績一覧

著書

・門脇耕三編『「シェア」の思想/または愛と制度と空間の関係』、千葉雅也「悪いこともできる建築——秘密とモノ」(インタビュー)、232-254頁、LIXIL出版、2015年7月。
・津原泰水編『文藝別冊 金子國義——あなたは美しい』、千葉雅也「さしあたり採用された洋食器によって――金子國義への追悼」、106-110頁、河出書房新社、2015年8月。
・『ドゥルーズ――没後20年 新たなる転回』、小泉義之・千葉雅也「ドゥルーズを忘れることは可能か——二〇年めの問い」、2-24頁、2015年10月。
・大澤真幸編『岩波講座 現代 第七巻 身体と親密圏の変容』、千葉雅也「思弁的実在論と無解釈的なもの」、107-129頁、岩波書店、2015年12月。

翻訳

・カンタン・メイヤスー『有限性の後で——偶然性の必然性についての試論』、千葉雅也・大橋完太郎・星野太訳、人文書院、2016年1月。

論文・批評など出版されたもの

・千葉雅也「アンチ・エビデンス──90年代的ストリートの終焉と柑橘系の匂い」、10+1 web、2015年4月。
・千葉雅也「バロック的前提から過少の言葉へ」、『現代思想』第43巻9号、132-135頁、2015年5月。
・内海健・千葉雅也・松本卓也「自閉症スペクトラムの時代──現代思想と精神病理」、『現代思想』第43巻9号、28-49頁、2015年5月。
・大澤真幸・千葉雅也・吉川浩満「絶滅とともに哲学は可能か」、『現代思想』第43巻13号、28-45頁、2015年9月。
・アレクサンダー・ギャロウェイ/千葉雅也「権威(オーソリティ)の問題——思弁的実在論から出発して」、小倉拓也・千葉雅也訳、『現代思想』第44巻1号、44-51頁、2016年1月。
・千葉雅也「緊張したゆるみをもつ言説のために」、『ユリイカ』第48巻4号、14-21頁、2016年2月。
・溝口彰子・千葉雅也「哲学者 千葉雅也さんとの対話」前・後編、2CHOPO、2016年3月。

学会発表

・Masaya Chiba, “Materiality in Limbo,” 2015 Asia Theories International Symposium, Waiting: Time / Theory / Action in Global Asias, National Chung Hsing University, 2 Oct 2015.
・Masaya Chiba, “The Deleuzean Negativity Revisited,” Deleuzean Aftereffects: Interventions from Japan, Kingston University, 10 Dec 2015.

講演・対談など

・千葉雅也「教養を拡げる技術——自分のこだわりから始めて、歴史へ踏み込む」、桐光学園、2015年5月23日。
・千葉雅也「方法について——人文学を始めるために」、作新学院英進部、2015年11月21日。
・千葉雅也・佐々木敦「ゲンロン批評再生塾 第14回 イディオムを探せ」、ゲンロンカフェ、2015年12月24日。
・西谷真理子・千葉雅也・ホンマタカシ「これからの、もうひとつの電車」、鉄道芸術祭vol. 5、アートエリアビーワン、2015年12月26日。
・千葉雅也・東浩紀「思弁的実在論の展開について――メイヤスー『有限性の後で』刊行直前対談」、ゲンロンカフェ、2016年1月15日。
・千葉雅也・土屋誠一・柴田英里「セクシュアリティと暴力——セクシャルマイノリティの表現史」、マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー第3回、新宿眼科画廊、2016年2月20日。

被取材

・千葉雅也「まなびSTORY」(インタビュー映像)、ベネッセ、2015年7月。
・コメント、「東京都が作ったボランティア制服ダサすぎないか」、『FRIDAY』第32巻25号、28頁、2015年6月。
・コメント、「政治と芸術、結びつく先は 「文化芸術懇話会」から考える」、『朝日新聞』、2015年7月7日、朝刊。
・コメント、「日本独自の異性装は神性の証し マツコで考える女装の正統性」、『サイゾー』第15巻9号、52-53頁、2015年9月。
・千葉雅也「 “シック”とは何か。」、『&Premium』第2巻12号、108-109頁、2015年10月。
・千葉雅也「哲学的思考のススメ」、『Precious』第12巻16号、376-377頁、2015年11月。

創作

・千葉雅也「僕は、僕の口語を置き換えたりしない」、『文學界』第69巻4号、2015年4月。

その他の活動

・審査員、TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD #5、東京都現代美術館、2015年6月6日。

ゲーム実作検討会

院生代表者

  • 焦 岩

教員責任者

  • 吉田 寛

企画目的・実施計画

 本研究会ではゲームを社会の様々な側面においていかに活用できるのかという問題を趣旨とする。そこで、Gamificationの方向で日本語教育における学習成果を向上するという目的をもち、『ゲームデザイン手法を日本語教育プロセスデザインへの導入』というテーマで進めていく。諸参加者はその目的を達成するため、個々の知識を活用し、目的に関わる要素と問題を議論したうえでゲーム案を提出する。その案に沿うゲームシステムを実作し、実験をおこなう。この実験の結果に基づき、ゲームが社会で活用できることを証明する。
2015年度まで活動してきたゲームに関する研究会は、主に理論的な作業をおこなっている。しかし、ゲームを社会で活用するための実践的な研究も必要であると思われる。そのため本研究会は社会にゲームの知識を還元することに努め、最終的には実践をするデータと結果に基づいて理論を再検討することによって、理論と実践の連動的な知を得ることを目指す総合的な研究というところに意義がある。
 今年度における研究活動は10回の定例研究会を開催し、定期的に中間報告をおこなうことを予定している。また、シリアス・ゲームに関する研究をおこなっている韓国祥明大学校のユンヒョンソッブ先生に『ゲームの社会への価値』と題した講演とゲーム研究センターでの講演を二回でおこなっていただく。今年度の研究成果については、日本デジタル学会(DiGRA JAPAN)で発表する。そして、実作したゲームシステムを用いる実験をおこない、データと結果を集計し、目的を達成したのかを検討する。また、今年度の活動を整理し、学会への投稿論文を執筆する。

活動内容

構成メンバー全員が本年度,フィールドワークから整理事項をまとめ査読論文を執筆という状況になったため,研究成果を還元するためにも,充実したフィールドワークと論文完成に専念することとした。そのため,個人情報が多く含む事項であったため,フィールドワークや資料収集報告をまとめるための1回の研究会(2017年2月25日)非公開で行うにとどまった。
もっとも力を入れた各自のフィールドワークは次の通りである。

  • 定期例会
  • 第1回研究会
    日時:平成28年6月10日(金) 9:30~12:00
    場所:究論館
    内容:第一回では、全10回を予定している今後の研究会の予定、役割分担を決め、又、本研究についての参考文献の確認等を行った。

    第2回研究会
    日時:平成28年7月28日(木) 18:00~20:00
    場所:創思館 412教室
    内容:現在の日本語教育についてのプレゼンテーションを日本語教育研究科のメンバーが行った。
    発表者、議題は以下の通りであった。
    稲田 「国内外の多様な学習者」について
    山口 「日本語教授法について」について
    藤崎 「第二言語習得と学習」について
    廣田 「日本語の教科書、授業内で行われるゲームについて」について

    第3回研究会
    日時:平成28年8月2日(火) 10:00~12:20
    場所:創思館 405、406教室
    内容:韓国のゲーム業界の第一人者であるユン先生に来日頂き、講演会を開催した。
    研究会メンバー以外の方にも講演会に参加頂き、ユン先生が今まで、実践されてきた様々な分野におけるゲームの活用や、今後、考えられているゲームの多分野での活用の可能性を紹介頂き、参加者の方々との質疑応答を行って頂いた。

    第4回研究会
    日時:平成28年8月24日(水) 10:30~12:00
    場所:究論館
    内容:焦さんによる、ドイツ、Universität Leipzigにて8/15~17に開催された「Replaying Japan 2016」の報告をした。

    第5回研究会
    日時:平成28年9月23日(金) 15:00~16:00
    場所:究論館
    内容:「日本語教育システム」ゲーム案の検討
    焦さんが作成されたの「ゲーム要素を導入する日本語教育システム企画案(仮)」を元について、改善点等を議論した。

    第6回研究会
    日時:平成28年11月2日(水) 9:00~11:30
    場所:究論館
    内容:「日本語教育システム」ゲーム案の検討
    授業方針の確認と授業内容・授業の流れを決定、また、被験者の学生の集め方について検討した。

    第7回研究会
    日時:平成28年11月9日(水) 9:00~10:30
    場所:究論館
    内容:「日本語教育システム」ゲーム案の検討
    藤崎さんに諺・四字熟語の導入の模擬授業をしてもらった。

    第8回研究会
    日時:平成28年11月17日(木) 19:30~21:40
    場所:究論館
    内容:「日本語教育システム」ゲーム案の検討
    ・今後のスケジュールの確認
    ・授業で使用するテスト等の作成者の分担確認

    第9回研究会
    日時:平成28年12月14日(水) 9:30~10:30
    場所:究論館
    内容:日本デジタルゲーム学会に向けて参加形式、提出書類の確認等の検討と確認

    第10回研究会
    日時:平成29年1月18日(水) 9:00~10:30
    場所:究論館
    内容:
    日本語学校への協力依頼の進捗状況報告と日本語学校への説明資料の方向性の検討
    デジタルゲーム学会に提出する予稿原稿の方向性の検討

  • 上記毎月の定例研究会以外の臨時研究会
  • 日時:平成28年12月7日(水)9:00~10:30
       平成28年12月17日(土)9:30~12:00
       平成28年12月21日(水)9:30~12:00
       平成29年1月18日(水)9:30~12:00
       平成29年1月31日(火)20:30~11:00
       平成29年2月16日(木)9:30~12:00
       平成29年2月23日(木)9:30~12:00
       平成29年3月2日(木)10:00~12:30
       平成29年3月9日(木)10:00~12:00
       平成29年3月16日(木)10:00~12:00
       平成29年3月19日(日)18:00~22:00
    場所:究論館
    内容:参考文献についての輪読・発表・議論
    日本デジタルデジタルゲーム学会で発表する予稿作成
    日本デジタルデジタルゲーム学会で発表する本原稿作成
    平成29年3月20日(日)に実施する授業(実験)の内容の精査、準備

  • 本プロジェクトの実験(授業)
  • 日時:平成29年3月20日(月)9:00~12:30(実験実施)
    場所:究論館プレゼンテーションルームA・B
    内容:日本語学習者に対して本プロジェクトで作成した「ゲームデザイン手法を用いた日本語教育」の授業実施と被験者へのアンケート、インタビュー

成果及び今後の課題

 本プロジェクトの成果として以下の点が挙げられる。
ゲーム手法を用いた日本語教育をプロセスデザインし、そのシステムを平成29年3月11日(土)星城大学で行われた「日本デジタルゲーム学会」で論文発表を行った。
 また、本プロジェクトでデザインした日本語学習システム「王者の学習」を用いて大学生、大学院生、日本語学校生を対象に授業を実施し、そのプロセスデザインの有効性を確認する実験を行った。その実験は平成29年3月20日(月)に行ったばかりであり、まだ、実験で得られたデータの正確な検証、分析は行えていないが、参加者のインタービューやアンケートでは、本プロジェクトが目標としていた日本語学習におけるモチベーションのアップを実感したと回答をした被験者が多く見られ、今後の検証、分析で有効性を確認できる結果が期待できるのではないかと思われる。
 また、今回は先端総合学術研究科の院生2名と言語教育情報研究科の院生3名のというそれぞれの専門領域を超えたプロジェクトであったので、先端総合学術研究科の院生は専門外である日本語教育分野の知識を吸収でき、言語教育情報研究科の院生も専門外であるゲーミフィケーションの知識を得ることができた。
 また、博士課程の院生、修士課程の学生が一緒に研究することで、論文作成、学会発表等に不慣れな修士課程の学生が博士課程の学生から過程や手法を学べたことも大きな成果であると思われる。
 今度の課題としては、平成29年3月20日(月)に行った実験結果のデータの整理、分析を行いその効果の検証を行う。また、今回の実験およびその準備に際しての反省点等をメンバー間で話し合いの場を設け、今回の研究を実際に教育現場に導入するために、改善点の有無の検討を行う。
 また、このプロジェクトは平成29年3月31日にて修了となるが、引き続き、このメンバーで先日発表した「日本デジタルゲーム学会」での発表論文に、その後の実験実践やその結果を追加執筆し、「日本デジタルゲーム学会」への論文投稿を目指したい。

構成メンバー

焦 岩(表象領域・2014年度入学)
江 葉航(表象領域・2015年度入学)
廣田 恵美子(言語教育情報研究科日本語教育学・2016年度入学)
山口 美咲(言語教育情報研究科日本語教育学・2016年度入学)
藤崎 美津子(言語教育情報研究科日本語教育学・2016年度入学)<

公式/非公式なる「生」研究会

院生代表者

  • 篠原 眞紀子

教員責任者

  • 立岩 真也

企画目的・実施計画

 私たちは,フィールドワークによる研究の中で,障害を持つ人や病を持つ人が,如何に生きてきたのかを,それぞれの研究課題の問題意識として共通にもってきた。それぞれの研究対象の検討を共同で行うことによって,公式的なるものと非公式なるものの「生」を求めていくことがプロジェクトの目的である。

活動内容

構成メンバー全員が本年度,フィールドワークから整理事項をまとめ査読論文を執筆という状況になったため,研究成果を還元するためにも,充実したフィールドワークと論文完成に専念することとした。そのため,個人情報が多く含む事項であったため,フィールドワークや資料収集報告をまとめるための1回の研究会(2017年2月25日)非公開で行うにとどまった。
もっとも力を入れた各自のフィールドワークは次の通りである。

  • 岸田典子経過報告 (2016年度 京都府立盲学校資料調査,聞き取り調査)
  •  
    京都府立盲学校資料室来訪。視覚障害者の歴史,『点字毎日』1946~8年記事項目を閲覧。
    閲覧提供に至った資料は50センチメートルくらいの厚みであったが,すべて点読。
    閲覧期間は本年度中,断続的に都度赴いて読解作業に当った。
    閲覧の内容――盲人会連合(盲会)内外盲会ニュースとしてあんま・はり・きゅうについて
    この訪問により,終戦後の視覚障害者の生活一般を概観した。
    資料室には40年前。文部省申請書類もあり,資料室の(岸)主席責任者への聞き取りを重ね,研究資料の協力を得るまで至った。
    本年度は盲教育に関する戦後から1970年代までの資料調査を行った。
    敗戦後,普通科ができ,1949年同志社大学入学者(永井正彦)1名の存在を資料から確認した。彼は楠敏男氏の大学進学を強力に進言した人でもある。
    盲学校退職後,京都ライトハウス創立した鳥居徳次郎氏が1953年に当学普通科専攻科を設立した事項を資料より確認し,盲学校調査で普通科専攻科について明らかになった。
    その他,長崎出身の京都視覚障害者協会会長田尻章氏への取材,楠敏雄氏より1級下の北海道出身の三上洋氏への取材を行った。

  • 鈴木陽子経過報告 2016年度フィールドワーク(すべて沖縄)
  • 5/3~5    元公衆衛生看護婦,養護教諭,行政担当者からの聞き取り調査。
    5/21~22   愛楽園退所者からの聞き取り調査。
    6/11     愛楽園職員から公衆衛生看護婦に転身した元公看からの聞き取り調査。
    6/25     愛楽園入所者・退所者親族からの聞き取り調査。
    7/31~8/5   沖縄公文書館にて公衆衛生看護婦関連の資料調査
           沖縄大学図書館にて日本MTL,沖縄MTLに関する資料収集
           宮古南静園にて入所者からの聞き取りおよび資料館準備状況の視察
           久米島にて,元公看,集落の人々,入所者家族からの聞き取り調査。
    8/9~12    愛楽園入所者・退所者からの聞き取り調査。
    9/25     愛楽園入所者(女性入所者を中心)からの聞き取り調査。
    12/23~25   愛楽園入所者・退所者からの聞き取りおよび資料調査(入所者自治会内の婦人
    会について)
    1/8~9    愛楽園入所者・退所者からの聞き取りおよび資料調査(入所者自治会内の婦人
    会について)

  • 篠原眞紀子経過報告 2016年度フィールドワーク(すべて恵那地方)
  • 4/13, 4/27   「生活の家」にて資料閲覧。働く仲間の会見学参加。 
    5/14    東小の統合教育から地域生活運動に関わった鳥居広明氏,伊藤三雄氏との談話。
    5/28    自活センターで一般就労や一人暮らしを促進している職員の方々と談話。   
    6/8,6/15,6/22 「生活の家」にて資料閲覧。働く仲間の会見学参加。
    7/13 「生活の家」恵那山グループホームの農園作業の手伝い。
    7/14, 8/10 「生活の家」にて資料閲覧。 働く仲間の会見学参加。
    8/23 「中津川市障害児者を守る会」の成瀬喜久子さんへの取材。
    8/24 「生活の家」にて資料閲覧。 働く仲間の会見学参加。
    9/14  中津川市立南小学校資料室にて元綴り方教師,自治会創始者野村夫妻への取材。
    9/18     仲間主催 立地する北原地区の高齢者の方々を招く催し「敬老会」見学
    10/10 洲原神社祭見学 「生活の家」の各サークルの上演手伝い。
    10/19~20  「生活の家」資料室にて資料閲覧 働く仲間の会見学参加。 
    11/26 「生活の家」内の「飛翔座」で開催された「北部地区民話勉強会」に参加。    
    1/18~19  「生活の家」にて資料閲覧。

成果及び今後の課題

 検討内容は,各自,コア・エシックスに還元することが可能になった。 
 本年度も客員研究員の定藤邦子さんには研究会に出向いてもらい助言協力,その他の研究相談にも協力していただいた。今後は,院生プロジェクトとは違った形式で開催を予定している。

構成メンバー

岸田典子 公共領域 2009年度入学
鈴木陽子 公共領域 2015年3年次編入学
篠原眞紀子 公共領域 2014年3年次編入学

科学史・医学史研究会

院生代表者

  • 坂井 めぐみ

教員責任者

  • 松原 洋子

企画目的・実施計画

 本研究会は、2013年から行ってきた「科学史・医学史論文の読書会」を継承し発展させるものである。科学史・医学史に関する論文を精読することとメンバーの研究報告を通して、科学史・医学史の基礎を学ぶとともに、メンバーの研究をさらに深めることを目的としている。本研究会は、けがや障害、疾病、乳幼児など身体の状態に対して導入、展開されてきた医療・技術をめぐる事柄について、あるいは衛生に関する制度について歴史的な手法を用いて研究するメンバーを中心に構成されている。対象としている事柄は異なるが、歴史研究という方法論は共通している。本研究会は2013年から行ってきたため、修了生や専門研究員からの研究上の助言を得られる体制を整えており、現院生は本研究会の活発な議論を通じて互いの関心を共有し、各自の研究を深化、発展させることができる。 
実施計画としては、学会発表やジャーナルへの投稿にあわせ各自の研究発表、フィールドワークや調査後には調査報告会を行い、研究会メンバーで議論・意見交換をおこなう。

活動内容

  • 第1回科学史・医学史研究会
    日時:11月5日(土)、13時〜15時半
    場所:創思館410
    報告者① 三浦藍「岩龍寺の精神病治療と同時期の民間療法について」
    報告者② 西沢いづみ「堀川病院における高齢者医療の取り組み(1968年〜1972年)」
  • 『近代日本の公衆浴場運動』合評会(主催:立命館大学生存学研究センター、共催:科学史・医学史研究会)
    日時:1月29日(日)、13時半〜18時14:10
    場所:キャンパスプラザ京都6階 第1講習室
    自著解題: 川端美季氏(立命館大学)
    評者コメント:祐成保志氏(東京大学)
    評者コメント:杉山博昭氏(ノートルダム清心女子大学)
    院生指定質問:坂井めぐみ

成果及び今後の課題

 第1回科学史・医学史研究会では、メンバー2名の研究報告をおこなった。修了生や他研究科からの参加もあり、活発な議論が展開された。ディスカッションを通し、研究の方向性や構成、今後の課題を明確にすることができた。各メンバーの研究は歴史研究という方法が共通しているため、論文構成などの点で各自の研究につながるディスカッションになった。また、生命領域修了生の川端美季氏による『近代日本の公衆浴場運動』の合評会を立命館大学生存学研究センターとの共催でおこなった。メンバーの調査内容としては、脊髄戦傷の医療や陸軍病院に関する文献・史料(『国立箱根療養所業績集 脊髄損傷』、臨時東京第一陸軍病院関係史料)の閲覧及び複写のために「しょうけい館 戦傷病者史料館」に行った【坂井】。また、都道府県、政令指定都市にタンデムマススクリーニングの実施状況のアンケートをおこなった【笹谷】。
 今年度は、科学史・医学史に関する論文を精読することができなかった。メンバーの研究報告だけでなく論文精読も合わせて行い、科学史・医学史の基礎を学び、メンバーの研究を深化させることが今後の課題である。

構成メンバー

坂井めぐみ 生命領域 2011年度入学
笹谷絵里 生命領域 2014年度入学
三浦藍 生命領域 2016年度入学
西沢いづみ 生命領域 2008年度入学

「認知」研究会

院生代表者

  • 佐藤 伸彦

教員責任者

  • 井上 彰

企画目的・実施計画

 私たちは、日々、意識するかどうかに関わらず、何らかの意思決定を行っている。こうした意思決定をするにあたり、様々な事象を考慮し判断を下している。しかし、私たちは常に合理的に判断を下せるわけではなく、認知バイアスに陥り、度々判断に誤りが生じる。このような認知心理学的知見が、経済学や社会学など多分野で扱われている意思決定に関する研究に影響を与えている。これは、個人の意思決定の様々な場面が想定され、医師や裁判官など専門家の判断においても不確実な事象下では同様に誤りが生じるとされている。
 本院生プロジェクトでは、構成員の研究テーマに参考となる基礎的な認知心理学上の知見を学ぶことを目的とする。実施計画は、①『認知心理学』(有斐閣、2010)の輪読、②個別研究発表および外部講師を招いた研究会、③学会発表、の3つの方法により、研究を進めるものした。

活動内容

 活動は、10月の法と心理学会へ向けての話し合いや報告等③学会発表(およびそれへ向けての活動)がその中心となった。
 また、2月22日にNPO法人セカンドチャンス!理事長の才門辰史氏を講師として招き、公開研究会を開催した。この公開研究会に先行して、少年法の概観、反社会的行動における「認知のゆがみ」と道徳性の遅滞、セカンドチャンスの来歴、「立ち直り」の社会学、について研究会の構成メンバーの報告による事前勉強会を行った。
 輪読については、後期に入り日程を何度か設けたが、調整が上手くいかず、参加者が十分にそろわず、ほとんど回数を取れなかった。

成果及び今後の課題

 構成メンバーのうち、2名が他研究科院生とともに上記・法と心理学会にて報告を行っている。
 また、外部講師を招いた研究会では、「少年院出院者からみた社会」をテーマに、議論を通じた「現場」と「研究」の架橋の試みを行った。犯罪や非行の「立ち直り」について、少年院出院者とその出院者自身の経験や現状、今後の課題を伺いながら、意見交換・議論を行えたことは大きな成果であったと思われる。
 一方で、輪読を当初の計画では予定していたものの、十分に輪読の機会を設けることができなかったことは課題として残った。

構成メンバー

佐藤伸彦 公共領域・2015年度入学
中村亮太 公共領域・2013年度入学
伊東香純 公共領域・2015年度入学
高木美歩 公共領域・2015年度入学
北野廣平 公共領域・2016年度入学
※本研究科院生のみ記載

ビデオゲーム文化研究会

院生代表者

  • 梁 宇熹

教員責任者

  • 吉田 寛

企画目的・実施計画

本研究会の目的は、ビデオゲームをはじめとするコンテンツ分野に関する歴史・変遷・現状を巡って、特にグローバルな視点から、既存のゲームスタディーズや視覚文化に対する理解を深めながら、将来性を検討することである。 本研究会においては、個々分野の分析だけではなく、多数のコンテンツを横断的に概括し、今後のビデオゲームや視覚文化に関する研究の方向と課題の提出を試みる。また、申請者達は本研究会を媒介として、各分野に関心を持つメンバーによる交流と支援、そして情報交換のためのネットワークの基礎を構築する。これは研究会を通してメンバー各自の研究の質を高めることに意義がある。主に今年度では上記目的のため、各自が研究活動で使用する英語文献の輪読・紹介を重きに置いた。

活動内容

  • 第1回研究会
    日時:2016年7月29日(木) 17時30分~19時00分
    場所:究論館 プレゼンテーションルームA
    内容: 第一回では、江葉航が担当となり、Dani Cavallaro『Anime and the Visual Novel: Narrative Structure, Design and Play at the Crossroads of Animation and Computer Games』(Mcfarland & Co Inc Pub,2009)の文献紹介と議論を行った。この文献は所謂日本で「恋愛シミュレーション」と呼ばれるジャンルのゲーム分析を行ったものである。内容としてはシナリオ分析が多いものではあるが、ゲーム分析を行う際に重要な部分や、主人公とキャラクター性(設定)の問題、アニメとの比較など、ビジュアルノベルとその派生作品との比較分析をする際に重要となる論点や、ゲーム研究における物語性の論点について、十二分な議論を行う事が出来た。
  • 第2回研究会
    日時:2016年12月01日(木) 17時00分~19時00分
    場所:究論館 プレゼンテーションルームA
    内容: 第二回例会では、川﨑寧生が担当となり、Carly A. Kourek『Coin-Operated Americans:Rebooting Boyhood At The Video Game Arcade,』(U.S.A:University of Minnesota Press,2015)の文献紹介と議論を行った。本文献は米国のアーケード文化史の、初期から00年代のプレイヤー文化に焦点を絞って分析されていた。本会ではとりわけこの書籍の中でも社会統制に関する部分が取り上げられ、アメリカにおける法制度や女性の社会進出といった、時代によって移り変わる社会背景とゲームがどのように関わるかという論点について、多岐に渡る議論が行われた。
  • 第3回研究会
    日時:2017年02月02日(木) 17時30分~19時00分
    場所:プレゼンテーションルームA
    内容: 第三回例会では、周鵬が担当となり、Miguel Sicart『Play Matters』(Cambridge: The MIT press,2014)の文献紹介と議論が行われた。本文献はビデオゲームも含めた遊戯論に関する文献である。本例会ではこの文献の遊びに対する姿勢(Playfulness)に議論の焦点が集まり、Playとしてのあり方や破壊からの再創造を主なものとするPlayfulness、それと相対するビデオゲームのシステム的な問題、Playfulnessの考え自体が持つ政治性など、様々な議論を行うことができた。
  • 第4回研究会
    日時:2017年02月25日(土) 12時00分~18時00分
    場所:大阪・日本橋~動物園前
    内容: 第四回例会では、本プロジェクトに留学生が多いということもあり、日本独自のゲーム文化を観察、分析するために、関西におけるゲーム文化のポータルと呼べる場所である、大阪日本橋を「でんでんタウン」、「オタロード」を中心に観察を行った。当日は全員が参加することはできなかったが、留学生に対し現地に20年前ほどから主に行っている川﨑がガイドとなり、ゲームセンターやゲーム店などを中心に観察を行った。結果的に留学生には異文化としての日本のゲーム文化の特殊性を把握することが出来、また川﨑や同行した吉田寛教授には、日本にいるだけではわからない中・韓から見た日本のゲーム文化の特殊性を見る事ができた。

成果及び今後の課題

 本研究会ではとりわけ各人が読み進めている英語文献を中心に現行専門化しつつある各ゲーム研究領域の共有化を努め、各々の研究テーマに合わせた文献を紹介し、議論を行うことで、参加者がより研究を進めながら活発に議論が行う場を作ることが出来た。また、本研究会所属の留学生が多いために行った大阪日本橋での観察は、日中韓とゲームに関する様々な様相が異なる研究生達の認識を共有し、各人の研究に活かす場を作ることが出来た。
 今後もこのような研究会を行い、参加者間におけるゲーム研究に関する理解を深めつつ、今後より活発になると思われるゲーム研究について、更に深い議論の場を作る事を考えている。また、議論を進めるだけではなく、今後もさらに研究会での内容を踏まえた発表や、論文作成へと発展させていきたい。

構成メンバー

梁 宇熹(表象領域・2012年度入学・代表者)
焦 岩(表象領域・2014年度入学・研究分担者)
川崎 寧生(表象領域・2008年度入学)
辛 注衡(表象領域・2014年度入学)
周 鵬(表象領域・2015年度入学)
向江 駿佑(表象領域・2015年度入学)
江 葉航(表象領域・2015年度入学)

昭和期表象文化研究会

院生代表者

  • 張 憲

教員責任者

  • 竹中 悠美

企画目的・実施計画

 本研究会は昭和期の表象文化に着目し、「昭和」のイメージがどのように表象・継承されているのかを、版画、絵画、文学、祝祭の4つの観点から多角的に明らかにすることを目的とした。2016年は下記のような昭和期を扱った展覧会が充実しており、複数の分野から比較研究をするには絶好の機会であった。本研究会では昭和期の美術を扱った展覧会と重要な出来事に纏わる式典を見学した。これによって、昭和の時代性を示す資料として何が収集されているのか(またはされなかったのか)、そこにどのような特質が見出せるかを、複数の分野から検討し比較することを目指した。活動としては、各メンバーは自分の専門分野にあった展覧会や式典を見学し、資料収集と可能な限り聞き取り調査を試み、報告会にて共有した。張(版画担当)は町田市立国際版画美術館(神奈川県)で開催された「小野忠重コレクション展――近代日本版画」展(2016年7月9日~9月22日)の見学を行った。枝木(文学担当)は弥生美術館(東京都)で開催された「耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る」展(3月31日~6月26日)の調査を行った。高見澤(絵画担当)は板橋区立美術館(東京都)で開催中の展覧会、「絵画・時代の窓 1920s-1950s」展(4月9日~6月19日)を見学した。後山(祝祭担当)は8月6日に平和記念公園(広島県)で開催される「平成28年広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」と8月9日に松山町平和公園(長崎県)で開催される「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」へ参加した。

活動内容

  • 第1回報告会 
    日時:2016年12月13日(火)12時00分~13時00分
    場所:衣笠キャンパス究論館公共スペース
    発表者:枝木妙子
    内容:枝木の調査報告と執筆中であった展覧会批評の発表を行い、ディスカッションを行った。
  • 第2回報告会
    日時:2017年2月21日(火)14時30分~16時30分
    場所:衣笠キャンパス究論館公共スペース
    発表者:高見澤なごみ、後山剛毅、張憲
    内容:高見澤と後山の調査報告とディスカッションを行った。張はこの日出席できなかったため、レポートで報告を行った。

成果及び今後の課題

 それぞれの調査で得られた成果は以下である。
張は、昭和期の近代版画を調査し、竹久夢二などの昭和期に制作された版画の表現が後に中国の年画に取り入れられていることを指摘し、昭和期の版画と中国の年画との関連性を指摘した。枝木が担当した弥生美術館の展示では、谷崎潤一郎の文学作品の描写にあわせて当時着用されていた着物が収集・展示されていた。谷崎は濃密な女性描写のために作中であえてシミや汚れを積極的に記述している。古い着物の汚れをそのまま展示していたことで谷崎作品の女性描写を再現することに成功していることを明らかにした。この成果は展覧会批評「谷崎の見た着物と女――『谷崎潤一郎文学の着物を見る』展評」として『コア・エシックス』Vol.13に掲載される予定である。高見澤は1920年代~1950年代の画家たちが、作風を変えながらも一貫して社会への不安や悲惨な現実を題材としていることに昭和期の絵画の傾向を見出した。また表現においても同じような構図やモチーフが複数回登場していることが指摘した。
 後山は広島と長崎の平和祈念式典のプログラムや司会、参加者の様子を比較し、行政主導で行われる広島の式典が厳粛で静かなのに対し、高校生や被爆者が中心となって会を進める長崎の式典は明るい印象を受け、両者の式典には明らかな温度差があることを明らかにした。
 これらの活動内容を共有し議論するなかで、昭和表象の多様性を確認することができただけでなく、各分野での展示方法の違いについても考えるきっかけとなった。また、メンバーが実際に調査を行い報告することでそれぞれの調査の様子を共有でき、調査方法の改善点も指摘された。さらに、本研究会は調査した内容を展覧会批評にまとめ投稿することを目標とし、最終的に1名が『コア・エシックス』にて成果を公開するに至った。しかし、メンバーの各分野への基礎知識や関心にバラつきがあったため、当初目標としていた各分野での昭和期の表象を比較しながら議論を深める作業を十分に行うことが出来ず、今後の課題であると考えている。

構成メンバー

張憲(表象領域 2013年度入学)
枝木妙子(表象領域 2013年度入学)
髙見澤なごみ(表象領域 2014年度入学)
後山剛毅(表象 2015年度入学)

母子世帯の生活困窮研究会

院生代表者

  • 笹谷 絵里

教員責任者

  • 立岩 真也

企画目的・実施計画

 本研究会の目的は、京都市内の母子世帯が直面している生活困窮の実態について、母子世帯の母親に対してインタビュー調査を行い、その調査結果を分析することである。母子世帯の生活困窮の背後にある重層的要因を分析するために、本プロジェクトは母子世帯の母親の自律性、とりわけ、時間的・経済的自律性に着目する。その理由は、先行研究において経済的困窮と時間貧困が述べられているものの、両者の関連についての分析がより一層必要とされているからである。本プロジェクトの意義は、実施したインタビュー調査の結果を分析することによって、母子世帯の母親の時間的・経済的自律性を規定する重層的要因の在り方を分析し、生活困窮の解消に向けた制度・政策の議論の基盤を提供しようと目指す点にある。

活動内容

  • 2017年6月11日 
    調査 15:30~16:30
     調査対象者1名についてインタビュー調査を実施。
    第1回研究会 17:00~19:00
     社会政策とジェンダー論を専攻している堅田香緒里准教授(法政大学)を招聘し、講演いただくととともに研究内容について検討を行った。今後も、質的調査を実施し、研究の充実を図るとともに、調査内容を学会発表や論文としていくことを検討した。本研究科修了生を含め多数の参加があり活発な議論が行えた。
  • 2017年9月11日
    日本社会福祉学会 第64回秋季大会【ポスターセッション】での発表
    発表題目:日本のローンマザーの時間と経済に関する自律性
      副題:インタビュー調査と子育て関連ケイパビリティからの分析
  • 2017年1月7日 
    調査 14:00~16:00
     調査対象者2名について、インタビュー調査を実施。
    第2回研究会 16:00~18:00
     第2回の研究会のテーマは、ゲスト講師を招聘して当事者へのインタビュー調査等の質的研究と母子世帯の生活困窮に関する理論研究の架橋について検討することであった。ゲスト講師は、社会政策とジェンダー論を専攻している堅田香緒里准教授(法政大学)を招聘した。5名の参加(その一人はスカイプで途中参加)があり、各人の研究関心に即した活発な議論があった。

成果及び今後の課題

 本プロジェクトでは、2016年6月にインタビュー調査及びゲスト講師を招聘してインタビュー調査を実施する上での着眼点である時間的・経済的自律性について検討する研究会を実施した。ゲスト講師は、社会政策とジェンダー論を専攻している堅田香緒里准教授(法政大学)を招聘した。第1回の調査対象者は、同様の研究課題を遂行した「労働問題・不安定生活・保証所得をめぐる国際的研究」(通称:労働研)のメンバーから紹介を受けた。研究方法として半構造化インタビューを採用して実施した。
 先の労働研のインタビュー結果と第1回のインタビュー結果を合せた母子世帯の母親の生活困窮の実態を分析し、その中間報告を9月に実施される日本社会福祉学会でポスターセッションでの発表を行った。発表題目:日本のローンマザーの時間と経済に関する自律性――インタビュー調査と子育て関連ケイパビリティからの分析である。ポスター発表ではケイパビリティを中心とした理論研究、社会政策の研究者などから多数の質問があり、活発な議論が行えたことは、本研究会の成果であり今後の研究に活かすことができるものであった。1月初旬に、インタビュー調査とともに、堅田准教授をゲストに招いた第2回の研究会を実施した。当初目標としていた日本社会福祉学会の学会誌への投稿には調査や分析が不十分であり今後の課題としたい。

構成メンバー

伊藤香純(公共領域・2015年度入学)
佐草智久(公共領域・2013年度入学)
中村亮太(公共領域・2013年度入学)
三輪佳子(公共領域・2014年度入学)
笹谷絵里(生命領域・2014年度入学)