マルチモーダル人類学先端研究会(立命館大学×ペンシルベニア大学)(2023年度)

院生代表者

  • 福田浩久

教員責任者

  • 小川さやか

概要

理性の優位を身体や情動といった観点から揺るがせようとする知的転回(ダマシオ 2005)や、デジタル革命により複合化したメディア状況を受けて、学術の対象と手法は従来のテクスト的・理性的なものを超えて、マルチモーダルかつ情動的なものを含むようになっている。日本で言えば、東京外大TUFiSCo、民博TRAJECTORIAといった機関、ジャーナルの創設が象徴的であり、マリノフスキーの時代からフィールド経験の全体性と格闘してきた人類学はその中で主要な参照点となっている。しかし、日本ではそうした動きが個々のプレイヤーに任されることで自由闊達さを担保してきた一方で、制度化されず、大きな動きにならないという弱点もあった。それに対して、アメリカでは、映像・マルチモーダル人類学に特化した機関や教育課程を設立し、積極的に制度化し、人類学の変革に貢献してきた。そこで、本プロジェクトでは、アメリカのマルチモーダル人類学の中心地のひとつであるペンシルベニア大学のファン・カストゥリジョン博士を7月に、デボラ・トーマス教授を1月に招聘し、それぞれシンポジウムを開くことで、日米双方の異なる学問風土からマルチモーダリティについて考察する。

活動内容

交渉するマルチモーダル人類学 ― 映像とテクストの〈あいだ〉、人類学知と先住民知の〈あいだ〉

日時:2023年7月9日 13:00-17:50
   第1部:映像上映 (開場12:30) 13:00-14:00
   第2部:ディスカッション 14:30-17:50
会場:立命館大学衣笠キャンパス 充光館シアター型教室(JK001)
   〒603-8346 京都府京都市北区等持院北町56−1
   https://goo.gl/maps/QFZXrxDPTEv2w1vS6
予約:https://forms.gle/Mt2mWpM1DqJk224VA(応募多数の場合は先着)

※使用言語は英語だが、日本語の同時通訳が入る。
同時通訳希望の方は申し込みフォームにチェックをお願いします。

成果及び今後の課題

 7月、1月双方のイベントとともに盛況のうちに終え、多くの気づきと学びを得ることができた。7月の会ではカストゥリジョン博士が現在執筆中の単著と映像がどう相互に絡み合いながら、従来の学知を超えるマルチモーダルな知を提示できるのかという点で学びと活発な議論が交わされた。1月のイベントでは、研究所、オンラインジャーナル、学会、ゲーム、メディア祭といった様々なマルチモーダル・プラットフォーム制作に従事されてきた方々の報告と議論の応酬があった。映像人類学、芸術、経済人類学、感情社会学といった異なるバックグラウンドを持った方々が相互に建設的に批判することから生まれる新たな気づきがあった。その中でも特に大きな課題は、マルチモーダルな制作をいかにして評価するかという評価法の確立だった。したがって、次年度の研究会ではこの評価を巡る思考を深めるべく活動していきたいと考えている。

構成メンバー

福田 浩久
藤本 流位
木田 真理子
柴田 惇朗

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